はじめに
ここからは問31〜35の解説に移ります。
このブロックでは、これまでの薬理や感染症中心の内容から一転し、循環器領域を軸としたフィジカルアセスメントと画像診断の統合力が問われています。単なる知識問題ではなく、身体所見・心音・画像・患者背景といった複数の情報を結びつけ、ひとつの病態に収束させる力が求められているのが特徴です。
特に印象的なのは、心不全や肺塞栓、大動脈疾患といった“見逃してはいけない疾患”が並んでいる点です。これらは、初期評価のわずかな判断の違いが、そのまま予後に直結する領域でもあります。そのため、「知っているか」ではなく、限られた情報からどこまで病態をイメージできるかが試されていると感じました。
本記事では、それぞれの問題について、フィジカル所見の意味づけから診断に至るまでの思考過程を丁寧に整理し、臨床現場で再現できるレベルの理解を目指して解説していきます。
問題31:肺性心(cor pulmonale)と右心不全の身体所見
慢性肺疾患に伴う肺性心(cor pulmonale)の患者で認められる身体所見はどれか。
a.肝腫大
b.Homan徴候
c.心尖拍動の左外方偏位
d.II音の減弱
e.左室肥大
解説
肺性心とは、
慢性肺疾患により肺高血圧が生じ、右心系に負荷がかかる状態
その結果として起こるのは、右心不全です。
右心不全の代表的な身体所見は:
- 頸静脈怒張
- 下腿浮腫
- 肝腫大
したがって、aが正解となります。
他の選択肢:
- b:Homan徴候 → 深部静脈血栓症
- c:左外方偏位 → 左室拡大(左心不全)
- d:II音減弱 → むしろ肺高血圧ではII音亢進
- e:左室肥大 → 左心系の問題
診療看護師に求められる視点
この問題の本質は、
「右心か左心かを身体所見で見分ける力」です。
- 右心不全 → うっ血は“全身側”
- 左心不全 → うっ血は“肺側”
この区別ができると、診断の精度は大きく上がります。
問題32:心不全と心音(III音)
45歳男性。労作時呼吸困難を主訴に来院した。胸部X線で心胸郭比78%,心エコーで左室駆出率(EF)20%と低下し,軽度の肺うっ血を認める。
この患者の心音として最も考えられるのはどれか。
a.I音の増強
b.II音の固定性分裂
c.III音(過剰心音)
d.拡張期ランブル
e.opening snap
解説
この症例は、収縮不全型心不全(HFrEF)です。
心不全といっても、左室駆出率(EF)の程度によって3つのタイプに分類されるます。健康な心臓ではEFがおよそ55~70%と保たれていますが、このEFの値に基づき、現在は次の3つのタイプの心不全に分類されています。
- HFrEF(ヘフレフ): EFが40%未満に低下したタイプの心不全。心臓の収縮力(ポンプ機能)が著しく落ちている状態を示す。
- HFmrEF(ヘフエムレフ): EFが40~49%程度と軽度心機能が低下した、中間的なタイプの心不全。近年提唱された新しい分類。
- HFpEF(ヘフペフ): EFが50%以上保たれているにも関わらず起こる心不全を示す。一般的に「心機能が落ちていない心不全」という状態。心不全が心臓の収縮だけで起こるわけではないということを表しています。
EFの“r”はreduced(低下した)、“mr”はmid-range(中間の)、“p”はpreserved(保たれた)を意味しています。
〈特徴〉
- EF低下
- 心拡大
- うっ血
このとき出現しやすいのが、III音(S3)です。
〈機序〉
- 拡張早期に血液が急速に流入
- 拡張した心室壁が振動
→ 過剰心音として聴取される
他の選択肢:
- a:I音増強 → 僧帽弁狭窄など
- b:固定性分裂 → 心房中隔欠損
- d:拡張期ランブル → 僧帽弁狭窄
- e:opening snap → 僧帽弁狭窄
診療看護師に求められる視点
重要なのは、「心音を病態で理解する」ことです。
- S3 → 容量負荷・心不全
- S4 → 圧負荷・肥大
単なる暗記ではなく、
心臓の中で何が起きているかを想像できるか
が問われています。
問題33:肺血栓塞栓症の確定診断
中年女性。突然の呼吸困難と胸痛を主訴に来院した。心電図で右脚ブロックを認め,心エコーで右室拡大・右室負荷所見を認めた。
この疾患の確定診断に最も有用な検査はどれか。
a.造影CT(肺動脈造影CT)
b.Dダイマー
c.下肢静脈造影
d.FDG-PET
e.冠動脈造影
解説
この症例は典型的な、肺血栓塞栓症(PE)です。
確定診断に最も重要なのは、
造影CT(CT pulmonary angiography)です。
〈理由〉
- 肺動脈内の血栓を直接描出できる
他の選択肢:
- Dダイマー → 除外には有用だが確定診断不可
- 下肢静脈造影 → 原因検索
- PET → 不適
- 冠動脈造影 → 心筋虚血評価
診療看護師に求められる視点
ここで問われているのは、
「スクリーニングと確定診断を区別できるか」
です。
- Dダイマー → 除外
- CT → 確定
この整理ができていないと、検査選択がブレる原因になります。
問題34:Marfan症候群と大動脈解離
若年女性。突然の激烈な背部痛で受診した。身長175 cm,体重48 kgで四肢が長い。既往に自然気胸があり,水晶体脱臼に対して手術歴がある。
この患者で疑われる疾患の確定診断に最も適した検査はどれか。
a.造影CT
b.血管造影
c.心電図
d.胸部X線
e.心エコー
解説
この症例は、Marfan症候群+大動脈解離を強く疑います。
確定診断は、
造影CT
理由:
- 解離の範囲・部位を迅速に評価可能
他の選択肢:
- 心エコー → 補助的
- X線 → スクリーニング
- 血管造影 → 侵襲的
診療看護師に求められる視点
ここで重要なのは、
「見逃してはいけない疾患を即座に想起する力」です。
- 突然の激痛
- Marfan体型
→ まず大動脈解離を疑う
この一手が遅れると、致命的な結果につながる領域です。
問題35:高血圧と標的臓器障害
高血圧患者における臓器障害として正しいものはどれか。
a.左室肥大
b.網膜出血
c.蛋白尿
d.脳出血
e.以上のすべて
解説
高血圧は、
全身の血管を障害する疾患です。
代表的な標的臓器:
- 心臓 → 左室肥大
- 眼 → 網膜症(出血)
- 腎臓 → 蛋白尿
- 脳 → 脳出血
したがって、すべて正しい。
診療看護師に求められる視点
重要なのは、
「高血圧=単なる数値ではない」
という理解です。
これは、全身疾患です。
したがって、
- 心
- 腎
- 脳
- 眼
すべてを評価する必要があります。
まとめ
このブロックの本質は明確です。
「点の情報を“循環”として理解できるか」
- 身体所見 → 右心不全(問題31)
- 心音 → 心機能(問題32)
- 症状 → 疾患 → 検査(問題33・34)
- 疾患 → 全身影響(問題35)
つまり、ここで問われているのは、
「臓器単位ではなく、循環全体で考える力」です。
- 血液がどう流れているか
- どこに負荷がかかっているか
- その結果何が起きるか
👉 すべてつながっている
この視点を持てるかどうかが、
診療看護師としてのレベルを大きく分けます。
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