はじめに
2025年度の診療看護師資格認定試験を受験し、その記憶が鮮明なうちに試験内容をまとめることにしました。
これまでnoteに投稿してきた大学院入試や進級試験に関する記事には、多くの方から反響をいただき、「実際にどのような思考が求められているのかが分かる」という声を多く頂戴しました。今回の資格認定試験においても、その延長線上にあるような、“知識の量”ではなく“臨床でどう考えるか”が一貫して問われていることを強く実感しています。
実際に出題された問題を振り返ると、様々な領域を横断しながら、「この状況で診療看護師としてどう判断するか」という視点が随所に散りばめられていました。単なる正誤問題であっても、その背景には臨床判断や患者対応のプロセスが求められており、まさに診療看護師ならではの試験内容であったと感じています。
そこで本記事では、午前共通問題の一部を再現し、1問ずつ解説を加えながら、出題の意図と求められている思考過程を整理しました。単なる問題の答え合わせではなく、「なぜその選択肢を選ぶのか」「他の選択肢はなぜ違うのか」といった臨床的な視点を重視してまとめています。
これから受験を控えている方にとっては具体的な試験対策として、すでに臨床で活躍されている方にとっては思考の整理として、本記事が診療看護師に求められる力を見つめ直す一助となれば幸いです。
問題6:周産期医療と予防(胎児へのリスクコミュニケーション)
挙児希望の女性。日常的にビールを1〜2杯/日飲酒しており,胎児への影響について相談があった。適切な指導はどれか。
- 妊娠初期の飲酒は必ず胎児に影響する
- 妊娠後期からであれば飲酒は可能である
- 週に2日の休肝日を設ければ問題ない
- ビールは1日1本までであれば安全である
- 飲酒により胎児に奇形や発達障害が生じる可能性があるため禁酒が望ましい
解説
この問題は単なる「妊娠中の飲酒の知識」ではありません。
アルコールは胎盤を通過し、胎児の血中濃度は母体とほぼ同等になります。胎児はアルコール代謝能が未熟であるため、曝露時間が長くなり、中枢神経系への影響が問題となります。
代表的なのが
胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)
- 顔貌異常
- 発達障害
- 学習障害
などを引き起こします。
重要なのは、「安全な摂取量は存在しない」という点です。
そのため、
- a:必ず影響 → 科学的に断定不可
- b:後期ならOK → 神経発達は全期間で進行
- c:休肝日 → 無意味
- d:量で安全性は担保できない
となり、
→ e:禁酒が望ましい
が唯一の適切な指導になります。
診療看護師に求められる視点
不確実性の中で最善を提示する力
臨床では、
- エビデンスが「絶対」ではない
- しかし判断は求められる
という状況が多々あります。
この場面で求められるのは、
→「リスクを正しく伝え、最も安全な行動を選択できるよう支援すること」
単なる説明ではなく、
行動変容につなげるコミュニケーションが問われています。
問題7:生活習慣病管理(メタボリックシンドロームの介入戦略)
40歳代男性。特定健康診査にて異常を指摘された。身長170 cm,体重80 kg,腹囲98 cm,血圧140/70 mmHg,LDLコレステロール150 mg/dL。メタボリックシンドロームと診断された。この患者に対する栄養指導として適切なのはどれか。
- 1日2食とする
- 炭水化物の摂取を完全に制限する
- 野菜摂取量を1日350 g以上とする
- 総エネルギー摂取量を現在の半分にする
- 脂質中心の食事とする
解説
この症例は典型的なメタボリックシンドロームです。
- 腹囲:98 cm(内臓脂肪型肥満)
- 血圧:140 mmHg(高血圧)
- LDL:150 mg/dL(脂質異常)
→ 心血管イベント高リスク群
ここで重要なのは、「短期的に下げる」ではなく「長期的に改善する」という視点です。
各選択肢の本質を見ていくと:
- a:2食 → 血糖変動増大・過食誘発
- b:炭水化物完全制限 → 継続不能・リバウンド
- d:エネルギー半減 → 非現実的・代謝低下
- e:脂質中心 → 動脈硬化リスク増加
一方で、
→ c:野菜350g以上 は、
- 食物繊維 → 血糖・脂質改善
- 満腹感 → 過食防止
- 継続可能
という多面的メリットがあります。
診療看護師に求められる視点
「実行可能性」を含めた治療設計
ガイドライン通りでも、
- 実行できなければ意味がない
診療看護師は、“理想”ではなく“現実に機能する介入”を選ぶ職種 です。
この問題は、アウトカムを見据えた介入ができるかが問われていました。
問題8:医療倫理の基盤(ジュネーブ宣言)
ジュネーブ宣言に記されている内容はどれか。
- 無診察治療の禁止
- セカンドオピニオンの権利
- インフォームド・コンセントの概念
- 患者の秘密を守る義務
- 医師による父権主義的医療の推奨
解説
ジュネーブ宣言は、医師の倫理規範であり、現代の医療倫理の根幹をなすものです。
中核となるのは、
- 患者の尊厳の尊重
- 差別の禁止
- 守秘義務
特に重要なのが、「患者の秘密を守る」
これは単なるルールではなく、医療における信頼関係の前提条件です。
他の選択肢は、
- IC(c) → 後の概念
- セカンドオピニオン(b) → 患者権利
- 父権主義(e) → むしろ否定されるもの
診療看護師に求められる視点
倫理は“知識”ではなく“判断基準”
忙しい臨床の中でも、
- この情報は共有していいのか?
- 誰にどこまで伝えるべきか?
という判断は日常的に発生します。
迷ったときに立ち返る軸を持っているか が問われています。
問題9:小児医療と臨床研究(インフォームド・アセント)
急性リンパ性白血病の小児患者に対し,国内未承認薬を臨床試験として投与することとなった。投与に際して適切なのはどれか。
- 両親の同意のみで投与可能である
- 年齢や理解度に応じてイラストや説明資料を用いて本人にも説明する
- 投与量は医療安全委員会が決定する
- 本人の同意のみで投与を開始できる
- 事前にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を必ず実施する
解説
「同意の主体は誰か」ではなく「どう関わるか」
小児では、
- 法的同意:保護者
- 倫理的配慮:本人
つまり、インフォームド・アセント(assent)が重要になります。
選択肢bは、
- 年齢
- 理解度
に応じて説明方法を変えることを示しています。
これは単なる配慮ではなく、倫理的義務に近い概念です。
診療看護師に求められる視点
「伝える」から「理解させる」への転換
特に小児では、
- 専門用語 → 理解できない
- 抽象説明 → 伝わらない
そのため、説明の“翻訳能力”が必要です。
診療看護師は、「医療と患者の間をつなぐ通訳者的役割」を担います。
問題10:患者中心の医療(インフォームド・コンセントの本質)
インフォームド・コンセントについて正しいものはどれか。
- 医師法に明文化されている義務である
- 患者は一度同意した後でも撤回することができる
- 予後に関する説明は行う必要がない
- 説明は医師以外が行ってはならない
- 患者の理解度の確認は不要である
解説
ICの本質は、患者の自己決定権の保障 です。
重要なポイントは、
「同意は固定されたものではない」
つまり、
- 一度同意しても
- 状況や心理で変わる
そのため、
→撤回可能である(b)
が正解となります。
他の選択肢を見ると、
- a:法律明文化 → 判例・実務ベース
- c:予後説明不要 → 不十分
- d:医師のみ → 多職種で支える
- e:理解確認不要 → 本質否定
診療看護師に求められる視点
意思決定は“プロセス”である
診療看護師の役割は、
- 医師の説明を補足し
- 患者の理解を確認し
- 意思の揺れに寄り添う
ことです。
→「同意を取る」のではなく「意思決定を支える」
ここにNPの存在価値があります。
まとめ
今回の問題のまとめとしては
「患者の人生に介入する責任」
です。
予防(問題6)
生活習慣(問題7)
倫理(問題8)
小児(問題9)
意思決定(問題10)
すべてに共通するのは、
→「患者の未来を左右する関わり」
診療看護師資格認定試験は
「正解を選ばせているようで、思考様式を選別している」
点が我々診療看護師への暗のメッセージだなと感じています。
リスクをどう捉えるか
現実的にどう介入するか
患者とどう向き合うか
つまり、
診療看護師として“どうあるべきか”を問う試験ですね。
過去問について
今回紹介したのは共通問題から5問を抜粋したものです。
試験では、
-
より実践的な臨床問題
-
「迷わせる選択肢」
が多数出題されていました。
「どこが問われるのか」を知ることが最大の対策です
この度、共通問題、総合問題の全問再現をまとめた資料を作成しました。
今後受験する人に役立てればと作成していますので興味がある方はnoteの【2025年度】診療看護師認定試験問題完全再現をぜひチェックしてみてください。


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