はじめに
ここからの5問は、これまでの知識問題とはやや性格が異なり、「診断できるか」ではなく“その瞬間に何を選び、どう動くか”が中心に据えられています。感染性心内膜炎を疑う血液培養陽性、低血糖や意識障害への初期対応、小児の急変対応、腎不全患者の呼吸困難への判断、そして離島での急性冠症候群対応など、いずれも現場では数分〜数時間単位で予後が変わる状況です。
共通しているのは、知識そのものよりも、
「これは様子を見てよいのか」
「今すぐ介入すべきなのか」
「どのレベルの医療資源を動かすべきか」
というトリアージと初動判断が問われている点です。
特に医療資源が限られる状況(夜間・救急・離島・在宅など)では、診断の確実性よりも先に“患者の安全確保を優先した意思決定”が求められます。
このブロックは、まさに診療看護師としての本質である「判断して終わりではなく、行動に移す力」が試される内容になっています。
問題56:血液培養陽性(グラム陽性球菌)
58歳男性。発熱と腰痛を主訴に受診し,解熱鎮痛薬を処方され帰宅した。身体所見では脊椎叩打痛を認め,CVA叩打痛は認めない。その後,検査部より血液培養2セットからグラム陽性球菌(cluster)が検出されたとの報告があった。
この時点での対応として適切なのはどれか。
a.患者を直ちに呼び戻し,入院のうえ精査加療を行う
b.患者を呼び戻し,経口抗菌薬を処方する
c.電話で次回外来受診を指示する
d.外来で再度血液培養を採取する
e.次回外来で循環器内科に紹介する
解説
この問題の本質は単純です。
「血液培養2セット陽性(グラム陽性球菌cluster)=ほぼ臨床的菌血症」
そして最も重要なのは、“すでに帰宅させてしまった患者をどう扱うか”というリスク対応の判断です。
◆まずこの所見の意味
グラム陽性球菌が“cluster(ブドウ球菌様配列)”で2セット陽性というのは、ほぼ以下を意味します。
- 汚染や混入ではない可能性が高い
- 真の菌血症を強く疑う
- 特に黄色ブドウ球菌菌血症(S. aureus bacteremia)の可能性
黄色ブドウ球菌菌血症は、感染症の中でも特に重要で、
- 椎体炎
- 心内膜炎
- 敗血症
- 転移性感染(膿瘍形成)
へ進展しうる高リスク菌血症です。
今回の患者はすでに
- 発熱
- 腰痛(=椎体炎疑い)
- 脊椎叩打痛
を呈しており、むしろ感染巣は存在している可能性が高い状態です。
選択肢の検討
a.患者を直ちに呼び戻し,入院のうえ精査加療を行う → 正解
菌血症(特にブドウ球菌疑い)は外来フォローではなく即入院・精査・IV抗菌薬が基本です。
やるべきことは
- 再血液培養
- 抗菌薬開始(経験的治療)
- 感染巣検索(特に椎体・心エコー)
- 敗血症評価
「結果を伝えて次回外来」では完全に不十分です。
b.患者を呼び戻し,経口抗菌薬を処方する → 不適切
S. aureus菌血症は経口治療では不十分で、原則静注治療+入院管理です。
c.電話で次回外来受診を指示する → 不適切
最も危険な選択肢です。菌血症は“待つ病態”ではありません。
d.外来で再度血液培養を採取する → 不適切
再採血以前に、すでに治療介入レベルの陽性結果です。
e.次回外来で循環器内科に紹介する → 不適切
心内膜炎の可能性はあるが、まずは全身管理と入院評価が先です。
◆血液培養陽性の“重み”
血液培養結果は、“全身感染の証明”です。
特に以下は即対応
- S. aureus(黄色ブドウ球菌)
- Enterococcus
- 真菌
逆にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌は汚染もあり得ますが、今回は“cluster+2セット”で真菌血症レベルの重さです。
◆S. aureus菌血症の怖さ
S. aureus菌血症の致死率は高く、適切治療でも10〜30%程度の死亡率が報告されています。
理由は
- 血行性に全身播種しやすい
- バイオフィルム形成
- 抗菌薬が効きにくい感染巣形成
特に重要なのは「感染源コントロールが必須」である点です。
◆椎体炎との関連
ブドウ球菌菌血症では、椎体炎や硬膜外膿瘍が頻発します。
MRI評価が必要になる典型パターンです。
診療看護師としての視点
この問題で最も重要なのは、「検査値を見て安心しないこと」です。
血液培養陽性という情報は、“診断結果ではなく行動指示”です。
診療看護師に求められるのは:
- 汚染か真の菌血症かを瞬時に判断
- 重症感染症として扱う意思決定
- 受診勧告ではなく“入院レベルの判断”
つまり、「結果を読む力」ではなく「結果で動く力」が問われています。
問題57:低血糖?脳卒中?意識障害の対応
58歳男性。意識障害と冷汗を主訴に来院した。2型糖尿病でビグアナイド薬内服中であったが,6か月前より血糖コントロール不良のためインスリン療法が導入された。本日昼頃より意識障害と冷汗を認めたため搬送された。
まず行うべき対応はどれか。
a.頭部CT
b.骨髄穿刺
c.簡易血糖測定
d.血清インスリン濃度測定
e.脳波検査
解説
この問題の核心は非常にシンプルです。
「意識障害の初期対応は“診断”ではなく“除外すべき致死的原因の即時確認”」
その中で最優先になるのが低血糖です。
◆なぜ低血糖を最初に疑うのか
この症例は典型的です。
- 意識障害
- 冷汗(交感神経症状)
- インスリン使用中
これはほぼ教科書的に低血糖発作を疑う状況です。
低血糖は脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖を枯渇させるため、数分で不可逆的脳障害に進行する可能性があります。
◆“意識障害の鉄則”
救急初期対応では有名な原則があります。
“Check glucose first”
つまり、意識障害を見た瞬間に行うべきは
- CTでも
- 採血でも
- 画像でもない
血糖測定です
各選択肢の検討
a.頭部CT
→ 不適切。脳卒中は重要だが、その前に除外すべき致死的原因が低血糖。
b.骨髄穿刺
→ 不適切。本症例と関連なし。
c.簡易血糖測定
→ 正解。最優先。ベッドサイドで数秒で評価可能であり、低血糖なら即治療可能。
d.血清インスリン濃度測定
→ 不適切。インスリン濃度は急性期判断に不要。
e.脳波検査
→ 不適切。てんかん重積が疑われる場合でも、まず血糖確認が先。
◆低血糖の“偽装”の怖さ
低血糖は「神経疾患そっくり」に見えます。
- 片麻痺様症状
- 言語障害
- けいれん
- 昏睡
つまり脳卒中と完全に紛らわしい。
しかし治療は全く異なり、
- 脳卒中:再灌流・血圧管理
- 低血糖:即ブドウ糖投与
◆冷汗は重要サイン
冷汗は単なる症状ではなく、交感神経系によるカテコラミン反応です。
つまり
- 低血糖
- ショック
- 心筋虚血
など“危険な生体ストレス”を示唆します。
◆インスリン治療患者のリスク構造
インスリン導入患者では
- 食事摂取不良
- 腎機能低下
- 投与量ミス
により低血糖リスクが急増します。
特に高齢者では「無自覚低血糖」が問題になります。
◆なぜCTを先にしてはいけないのか
脳卒中を疑う状況でも、CTを優先すると危険な理由
- 低血糖は分単位で悪化
- CT施行中に不可逆的脳障害へ進行する可能性
- CTでは治療は1秒も進まない
つまり、“診断の優先順位=治療可能性の優先順位”です。
◆意識障害初期対応の“AIUEOCHIPS”
意識障害の初期評価では、原因を体系的に見逃さないための枠組みとしてAIUEOCHIPSが有用です。
- A(Alcohol / Acidosis):アルコール、アシドーシス(DKAなど)
- I(Insulin):低血糖・高血糖
- U(Uremia):尿毒症
- E(Epilepsy / Electrolytes):てんかん、電解質異常
- O(Oxygen / Overdose):低酸素、薬物中毒
- C(CO poisoning / CNS lesion):一酸化炭素中毒、中枢神経病変
- H(Hypothermia / Head):低体温、頭部病変
- I(Infection):感染症(敗血症など)
- P(Psychiatric / Pressure):精神疾患、頭蓋内圧亢進
- S(Shock / Stroke / Seizure):ショック、脳卒中、けいれん
今回の症例はこの中でも特に
I(Insulin=低血糖)が最優先で疑われる状況です。
重要なのは、このフレームは“全部を順番に考える”ためのものではなく、
「一瞬で致死的原因を拾い上げるチェックリスト」として使う点です。
診療看護師としての視点
この問題の本質は診断力ではなく、「最初の一手を誤らない力」です。
意識障害対応では、診断思考よりも先に「今すぐ是正可能で、見逃すと不可逆的になる病態」を拾うことが重要です。
AIUEOCHIPSはそのための思考補助ツールであり、実臨床では
血糖測定(I)
酸素化評価(O)
ショック評価(S)
の3つは“秒単位で確認すべき初動トリガー”になります。
つまり本問題の本質は、知識ではなく「フレームを使って初動を外さない能力」にあります。
診療看護師には、
- CTを考える前に血糖を見る
- 画像より先にベッドサイドで救命する
という“初動判断力”も求められます。
問題58:小児急変対応 ― “心停止”に向かう過程
2歳男児。ヒトメタニューモウイルス肺炎で入院中。看護師が訪室すると反応がなく,呼吸数6/分,心拍数48/分,SpO₂ 68%(酸素5 L/分投与中)であった。頸動脈は触知可能である。
この患者への初期対応として最も適切なのはどれか。
a.気管切開を行う
b.バッグバルブマスクによる陽圧換気を行う
c.胸骨圧迫を開始する
d.酸素テントに移す
e.アトロピンを投与する
解説
この問題の本質は、「小児の徐脈はまず低酸素を疑う」という小児救急の基本原則を理解しているかです。
成人では徐脈そのものが循環器疾患として出現することがありますが、小児では違います。
小児の重症徐脈の多くは、
- 呼吸・換気不全
- 低酸素
の結果として出現します。
つまりこの症例は、“心臓が悪い”のではなく、“呼吸が破綻している”状態です。
◆症例の危険サイン
この患児は、
- 反応低下
- 呼吸数6/分
- SpO₂ 68%
- 徐脈(48/分)
を呈しています。
特に重要なのは、高度低酸素+徐脈の組み合わせです。
小児では低酸素が進行すると迷走神経反射優位となり徐脈になります。
つまりこの徐脈は、“呼吸停止寸前”のサインなのです。
選択肢の検討
a.気管切開を行う
→ 初期対応としては侵襲的すぎる。まず換気補助。
b.バッグバルブマスクによる陽圧換気を行う
→ 正解。小児徐脈の原因である低酸素をまず是正する。
c.胸骨圧迫を開始する
→ 脈拍はある。まず換気が優先。
d.酸素テントに移す
→ 酸素投与だけでは換気不全は改善しない。
e.アトロピンを投与する
→ 原因治療にならない。
◆小児BLSの本質
成人の心停止は「心原性」が多いですが、小児は違います。
小児CPAの多くは
- 呼吸不全
↓ - 低酸素
↓ - 徐脈
↓ - 心停止
という流れをたどります。
つまり小児蘇生では、“胸骨圧迫より先に換気”が重要になる場面が多いのです。
◆なぜ酸素投与中なのにSpO₂が低いのか
本症例は酸素5L投与中にもかかわらずSpO₂ 68%です。
ここで重要なのは、「酸素化」と「換気」は別物という理解です。
換気が破綻すると、
- CO₂排出不能
- 肺胞換気低下
- 酸素取り込み低下
が起こります。
つまり酸素濃度を上げるだけでは救えません。
必要なのは、“肺を動かすこと”です。
◆胸骨圧迫を始めるタイミング
PALSでは
- HR <60/分
- 低灌流あり
- 換気・酸素化しても改善しない
場合に胸骨圧迫を開始します。
つまりこの問題では、まず適切換気を行うことが最優先です。
◆ヒトメタニューモウイルスの特徴
hMPVは乳幼児で
- 細気管支炎
- 肺炎
- 無呼吸発作
を起こします。
RSVと非常に似た経過をとり、重症例では急速に呼吸不全へ進行します。
診療看護師としての視点
この問題で問われているのは、「小児蘇生アルゴリズムを覚えているか」ではありません。
本当に重要なのは、“徐脈を循環器疾患として見ないこと”です。
小児の徐脈は、
- 低酸素
- 換気不全
- 呼吸停止前状態
を意味することが極めて多い。
つまり診療看護師には、「心拍数を見る」のではなく、“なぜ徐脈になったのか”を呼吸から逆算できる力が求められています。
この問題はまさに、“心停止対応”ではなく、“呼吸停止を先に止める医療”を問う、非常に実践的な問題だったと言えます。
問題59:CKD患者の呼吸困難 ― “肺うっ血の原因”を逆算
25歳男性。呼吸困難を主訴に来院した。慢性腎臓病で加療中である。胸部X線(別紙)で両側肺うっ血を認める。
血液検査:Hb 6.6 g/dL,K 5.7 mEq/L,pH 7.35,PaO₂ 88 Torr,PaCO₂ 38 Torr,HCO₃⁻ 14 mEq/L
この患者の対応として最も適切なのはどれか。
a.血液透析を行う
b.胸腔穿刺を行う
c.赤血球輸血を行う
d.スピロノラクトンを投与する
e.炭酸水素ナトリウムを投与する
解説
この問題の本質は、「検査値を個別に見るのではなく、“体液過剰による全身破綻”として統合できるか」です。
この症例では
- CKD
- 呼吸困難
- 肺うっ血
- 高K血症
- 代謝性アシドーシス
が同時に存在しています。
つまり起きているのは、“腎臓が水・電解質・酸塩基を処理できなくなった状態”です。
◆なぜ透析なのか
この患者で最も危険なのは、
- 肺うっ血(容量過剰)
- 高K血症
- 代謝性アシドーシス
が同時進行していることです。
これらはすべて、腎不全による排泄不能が背景にあります。
つまり根本的問題は
- 「酸が多い」
- 「Kが高い」
- 「水が多い」
ではなく、“それを捨てられない”ことです。
したがって必要なのは、原因そのものを代替する治療=透析です。
選択肢の検討
a.血液透析を行う
→ 正解。肺うっ血・高K血症・代謝性アシドーシスを同時に改善できる。
b.胸腔穿刺を行う
→ 胸水ではなく肺うっ血。原因治療にならない。
c.赤血球輸血を行う
→ Hb低値はあるが、容量負荷により肺うっ血悪化の危険。希釈され相対的に低下しているように見えているだけの場合も。
d.スピロノラクトンを投与する
→ K保持性利尿薬であり高K血症を悪化させる。
e.炭酸水素ナトリウムを投与する
→ 一時的補正は可能だが根本解決にならない。
◆透析適応 “AEIOU”
透析適応は有名な “AEIOU” で整理されます。
- A:Acidosis(重度代謝性アシドーシス)
- E:Electrolytes(特に高K血症)
- I:Intoxication(薬物中毒)
- O:Overload(体液過剰・肺水腫)
- U:Uremia(尿毒症)
今回の症例は:
- E(高K)
- O(肺うっ血)
- A(代謝性アシドーシス)
を満たしています。
つまり、「透析を考える」のではなく、“透析が必要な状態”です。
◆なぜHb 6.6でも輸血しないのか
Hbだけを見ると輸血したくなります。しかしこの症例ではすでに肺うっ血があります。
輸血は
- 循環血漿量増加
- preload増加
を引き起こし、呼吸状態をさらに悪化させる可能性があります。
つまり、“数値だけで輸血を決めない”ことが重要です。
◆HCO₃⁻低下の意味
HCO₃⁻ 14 mEq/Lは明らかな代謝性アシドーシスです。
CKDでは以下の状態になります。
- 酸排泄低下
- H⁺蓄積
さらに慢性アシドーシスは以下の内容にも関与します。
- 骨代謝異常
- 筋分解
- 心機能低下
◆高K血症で本当に怖いもの
K 5.7 mEq/L自体は極端ではありません。
しかし重要なのは、
- CKD
- アシドーシス
- 進行性排泄不能
が背景にある点です。
つまり:「これからさらに上がる」可能性が高い。
高K血症は数値単独ではなく、“病態の流れ”で判断します。
診療看護師としての視点
この問題で問われているのは、「透析適応を暗記しているか」ではありません。
本質は、
- 肺うっ血
- 高K
- アシドーシス
を別々に見るのではなく、“腎不全による全身破綻”として統合できるかです。
診療看護師には、「異常値を並べる力」ではなく、“どの臓器が限界を迎えているのか”を見抜く視点が求められています。
この問題はまさに、“数値の異常”ではなく、“代償破綻を読む力”を問う非常に臨床的な一題だったと言えます。
問題60:離島医療と急性冠症候群 ― “診断”より決断できるか
80歳代男性。離島在住。本日,胸痛を主訴に入院設備のない診療所を受診した。バイタルサインは安定しているが,12誘導心電図および迅速トロポニン検査(別紙)から急性冠症候群が疑われた。
この患者への対応として適切なのはどれか。3つ選べ。

a.家族へ速やかに連絡する
b.診療情報提供書を作成する
c.高次医療機関へヘリコプター搬送を手配する
d.地域包括支援センターへ連絡する
e.翌日の日中の定期船を予約し搬送する
解説
この問題は単なるACS(急性冠症候群)の知識問題ではありません。
本当に問われているのは、“限られた医療資源の中で、どれだけ早く適切な医療へ接続できるか”です。しかも舞台は「離島」です。
つまりこの問題では、
- 診断
- 治療
- 搬送
- 地域連携
が一体化した“地域救急医療”として考える必要があります。
◆この症例で最優先すべきこと
この患者は
- 胸痛
- 心電図異常
- トロポニン陽性
からACSが強く疑われます。
ACS、特に急性心筋梗塞では、冠血流が止まる時間が長いほど
- 心筋壊死
- 心不全
- 致死的不整脈
が進行します。
つまりこの問題で重要なのは、「今安定しているか」ではなく、“このあと急変する可能性が高い”ことです。
◆なぜヘリ搬送なのか
この診療所には入院設備がありません。
つまり:
- PCI不能
- CCUなし
- 緊急カテーテル不可
です。
ACS患者をこの場に留めること自体が危険です。
そのため必要なのは、“できるだけ早く再灌流可能施設へ搬送すること”です。
ここで重要なのは「明日搬送する」ではなく、“今搬送する”という時間軸です。
選択肢の検討
a.家族へ速やかに連絡する
→ 適切。高齢患者では搬送・意思決定支援のため重要。
b.診療情報提供書を作成する
→ 適切。迅速な情報共有は搬送医療の基本。
c.高次医療機関へヘリコプター搬送を手配する
→ 適切。ACSでは再灌流までの時間短縮が最優先。
d.地域包括支援センターへ連絡する
→ 慢性支援には重要だが急性期優先度は低い。
e.翌日の日中の定期船を予約し搬送する
→ 不適切。ACSで待機は危険。
◆“Time is muscle”
ACSで有名なのが
Time is muscle
つまり、時間経過そのものが心筋壊死量を増やすという考えです。
特にSTEMIでは
- Door-to-balloon time
- First medical contact
が予後に直結します。
◆離島医療の本質
離島医療では、「何ができるか」以上に、“何ができないかを理解すること”が重要です。
PCI不能環境でACSを抱えること自体がリスクになります。
つまり地域医療では診断能力だけでなく、搬送判断能力が極めて重要です。これは、離島に限らず、医療資源を客観的に見た上で転院搬送が最適だとなれば、都内の病院でも同様の判断能力です。
◆ACSは“突然死疾患”
ACSで怖いのは梗塞だけではありません。
特に急性期には
- VT/VF
- 房室ブロック
- 心原性ショック
など突然死イベントが起こります。
だからこそ、「今落ち着いているから様子を見る」は危険なのです。
◆トロポニンの意味
迅速トロポニン陽性は、“すでに心筋障害が始まっている”ことを意味します。
つまり単なる胸痛ではなく、「心筋細胞が壊れ始めている状態」です。
診療看護師としての視点
この問題で診療看護師に求められているのは、「ACSを診断できるか」だけではありません。
本当に重要なのは、
- 今この場で治療継続可能か
- どこへ繋ぐべきか
- 何分遅れると危険か
を判断する力です。
特に地域・離島医療では、“その場で完結させない勇気”が極めて重要になります。
診療看護師には、「自分で治す能力」だけでなく、“適切な場所へ患者を届ける能力”が求められています。
この問題はまさに、“診断学”ではなく、“医療システム全体を動かす臨床判断力”を問う非常に現実的な問題だったと言えます。
まとめ
今回の問56〜60では、感染症、低血糖、小児蘇生、腎不全、急性冠症候群と、一見すると領域横断的な問題が並んでいました。しかし共通して問われていたのは、単なる疾患知識ではなく、
「今この瞬間に、何を最優先で介入すべきかを見抜く力」
であったと感じます。
問56では、血液培養陽性という“検査結果”をどう解釈するかが問われました。特にグラム陽性球菌 cluster と脊椎叩打痛という組み合わせから、単なる発熱性疾患ではなく、菌血症や感染性心内膜炎、脊椎感染症まで視野を広げられるかが重要でした。ここでは「検査値を読む」のではなく、“検査結果の危険性を即座に察知する力”が本質でした。
問57では、意識障害患者に対する初期対応として、まず簡易血糖測定を行うことの重要性が問われました。AIUEO TIPS / AIUEO CHIPS に代表されるように、意識障害診療では「まず可逆性疾患を除外する」という救急思考が極めて重要になります。特に低血糖は、“数分の遅れが神経予後を左右する疾患”であり、検査より先に bedside で確認できる情報を優先できるかが試されていました。
問58では、小児BLS/PALSの本質が問われました。成人では循環不全主体の心停止が多い一方、小児では呼吸不全から徐脈・心停止へ進行することが多く、今回も「まず換気」が正解となります。つまりこの問題は、単なる蘇生アルゴリズムではなく、“小児はまず呼吸を見る”という病態理解が求められていました。
問59では、CKD患者の肺うっ血・高K血症・代謝性アシドーシスを、“腎不全による全身破綻”として統合できるかが重要でした。透析適応を暗記しているかではなく、「なぜ透析が必要なのか」を病態から逆算できるかが核心であり、AEIOUに代表される透析適応の考え方がそのまま臨床判断へ直結する問題でした。
そして問60では、離島医療という特殊環境下でのACS対応が問われました。ここでは診断そのものより、「今この場で何ができず、どこへ繋ぐべきか」を判断する能力が重要になります。PCI不能環境でACSを抱える危険性を理解し、“時間=心筋”という概念のもと、迅速搬送を決断できるかが本質でした。
総括
今回の5問を通して強く感じたのは、診療看護師に求められているのは、“診断学”よりも“優先順位の医学”であるという点です。
どの問題も、最終診断を完璧に当てること以上に、
- 今何が危険なのか
- 何を先に行うべきか
- どの介入が患者予後を左右するか
を瞬時に整理する能力が問われていました。
特に今回の問題群では、
- 菌血症を見逃さない
- まず血糖を測る
- 小児では換気を優先する
- 腎不全を全身病態として捉える
- 地域限界を理解し搬送を決断する
など、“初動の質”そのものがテーマになっていた印象があります。これは実臨床そのものです。
現場では、すべての検査結果が揃ってから判断できることは少なく、多くの場合、限られた情報の中で、「最も危険な可能性」を先に潰していく必要があります。
そして診療看護師には、その場で病態を統合し、「今この患者が悪化する理由は何か」
「次に起こる最悪の事態は何か」を予測しながら動く力が求められています。
今回の5問はまさに、“知識を持っているか”ではなく、“その知識をどの順番で使うか”を問う、非常に臨床的かつ実践的な問題群だったと言えるでしょう。
過去問について
今回紹介したのは共通問題から5問を抜粋したものです。
試験では、
-
より実践的な臨床問題
-
「迷わせる選択肢」
が多数出題されていました。
「どこが問われるのか」を知ることが最大の対策です
この度、共通問題、総合問題の全問再現をまとめた資料を作成しました。
今後受験する人に役立てればと作成していますので興味がある方はnoteの【2025年度】診療看護師認定試験問題完全再現をぜひチェックしてみてください。


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