はじめに
問題21:感染症(食中毒の原因菌と感染源の対応関係)
Which of the following relationships between foods and foodborne pathogens or toxins are incorrect? Select three.
a Salmonella enterica — raw egg
b Clostridium perfringens — rice ball
c Staphylococcus aureus — honey
d Vibrio parahaemolyticus — seafood
e Campylobacter jejuni — chicken
解説
この問題は「正しい組み合わせ」ではなく、
“違和感を見抜けるか”
が問われています。
まず鉄板の対応:
-
Salmonella × 生卵
-
Vibrio × 魚介類
-
Campylobacter × 鶏肉
これらは臨床で頻出の「反射で出るレベル」の知識です。
誤りの本質:
-
Clostridium perfringens
→ 大量調理・再加熱(カレーなど)
→ おにぎりは典型ではない -
Staphylococcus aureus
→ 手指汚染(弁当・おにぎり)
→ 蜂蜜ではない(蜂蜜はボツリヌスの文脈)
診療看護師に求められる視点
重要なのは、
「食歴から原因を逆算する力」です。
問診で、
-
鶏肉 → カンピロ
-
海産物 → ビブリオ
-
作り置き → ウェルシュ菌
と即座に浮かぶかどうか。
これは鑑別診断を広く想起させ対応力の質に直結します。
問題22:救急神経(くも膜下出血の予後規定因子)
46歳女性。突然発症した激しい頭痛を主訴に来院した。起床後トイレに行った際に「これまでに経験したことのない頭痛」が出現し,悪心・嘔吐を伴った。安静にしていたが改善せず受診した。意識は清明。体温37.2℃,脈拍84/分,血圧198/102 mmHg。項部硬直を認める。頭部CT(別紙)でくも膜下出血が疑われた。
この疾患の予後に影響する因子はどれか。2つ選べ。
a.正常圧水頭症の合併
b.脳血管攣縮の発生
c.脳動脈瘤の個数
d.再出血の有無
e.家族歴
解説
くも膜下出血の予後を決めるのは、
「二次障害」です。
最重要はこの2つ:
-
再出血 → 即致命的
-
血管攣縮 → 遅発性脳虚血
つまり、
「出血そのもの」より「その後」が重要
他の選択肢は補助的または無関係。
診療看護師に求められる視点
ここで問われているのは、
「時間経過で病態を整理できるか」です。
-
発症直後:出血
-
数日後:攣縮
-
常時:再出血リスク
この時間軸の理解が、
管理の質=予後
を左右します。
問題23:医療倫理(ACPの本質)
医療におけるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)について正しいものはどれか。
a.終末期にのみ実施される
b.患者本人の意思は考慮しない
c.患者・家族・医療者が繰り返し話し合う過程
d.変更できない
e.医師のみで決定
解説
ACP(Advance Care Planning)の本質は、
「将来に備えた意思決定を“繰り返し対話しながら形成していくプロセス”です。
重要なのは、
-
早期から開始する
-
一度で決めない
-
状況に応じて更新する
という点であり、cが正解となります。
さらに一歩深く:ACPからAdaptive Care Planningへ
近年、このACPの考え方はさらに発展しています。
従来のACPは、
-
将来を予測し
-
あらかじめ意思を文書化する
という日本語訳の事前指示書という言葉からも「静的(static)」な印象が強いものでした。
しかし実臨床では、
-
病状の変化
-
心理状態の変化
-
家族関係の変化
によって、患者の意思は変わり続ける という現実があります。
この課題に対して提唱されているのが、
Adaptive Care Planning という概念です。
これは、
-
患者
-
家族
-
医療者
の間で、継続的かつ反復的に対話を行いながら意思を調整していく枠組みであり、
「変化すること」を前提とした意思決定支援といえます。
このアプローチは特に、
-
在宅医療
-
慢性期医療
-
高齢者医療
といった領域で親和性が高く、実際に米国の報告では、患者の希望と実際の治療が約88.9%で一致
するなど、
-
満足度の向上
-
心理的安定
といった効果が示されています。

図:さまざまな病状の経過と医療ケアに関する話し合いの決定ポイント 引用)Moody SY, Bell CL, Lindenberger EC, et al. Adaptive Care Planning: A paradigm shift. J Am Geriatr Soc. 2024; 72(2): 337-345
診療看護師に求められる視点
この問題の本質は、
「意思決定をどう支えるか」
です。
診療看護師に求められるのは、「変わり続ける意思に伴走すること」です。
そのためには、
-
状態変化に気づく力
-
対話を継続する力
-
チームで共有する力
が不可欠です。
問題24:内分泌(甲状腺機能低下症と浮腫の機序)
高齢女性。両下腿浮腫を主訴に来院した。両下腿に非圧痕性浮腫を認める。無表情で眉毛外側の脱毛があり,腱反射の弛緩相遅延を認める。
血液検査:血糖低値,CK高値,TSH高値,FT3・FT4低値
この患者の浮腫の原因として正しいのはどれか。
a.内分泌性浮腫
b.リンパ性浮腫
c.腎性浮腫
d.心性浮腫
e.静脈性浮腫
解説
これは典型的な粘液水腫(myxedema)です。
ポイントは:
-
非圧痕性浮腫
-
皮膚へのムコ多糖沈着
→ 水が“押し戻らない”
したがって内分泌性。
診療看護師に求められる視点
ここで重要なのは、
「身体所見で診断に近づく力」
です。
検査を見る前に、
-
非圧痕性
-
無表情
-
眉毛外側脱落
で気づけるか。
これは臨床経験値そのものです。
問題25:小児感染症(急性中耳炎と抗菌薬選択)
生後6か月の男児。5日前から鼻汁と湿性咳嗽を認め,3日前から39〜40℃の発熱が持続している。兄にも同様の症状がある。耳漏を認め,耳漏のGram染色でグラム陽性双球菌を認めた。本症例に対する第一選択の抗菌薬はどれか。
a.ペニシリン系
b.カルバペネム
c.マクロライド
d.キノロン
e.アミノグリコシド
解説
起炎菌は、肺炎球菌
第一選択は、アモキシシリン
ここで重要なのは、
「強い薬を選ぶ」ではない
という点。
-
適切なスペクトラム
-
耐性を考慮
-
小児安全性
すべて満たすのがペニシリン系。
診療看護師に求められる視点
抗菌薬選択の本質は、
「最適化」
です。
-
強すぎない
-
弱すぎない
-
適応に合う
このバランスが取れるかどうか。
まとめ
今回の問題群を一言で表すと、
「情報をつなぎ、最適解を選ぶ力」
です。
共通しているのは:
-
食歴 → 病原体(問題21)
-
病態 → 予後(問題22)
-
対話 → 意思決定(問題23)
-
所見 → 診断(問題24)
-
検査 → 治療(問題25)
つまり、すべて“変換”の問題です。
この領域で試されているのは、
-
何を見て
-
どう結びつけて
-
どこに着地するか
思考のスピードと精度が問われています。
診療看護師は、
「考えてから動く職種」ではなく
「考えながら動く職種」
です。
この5問は、その本質を非常に端的に表しています。
過去問について
今回紹介したのは共通問題から5問を抜粋したものです。
試験では、
-
より実践的な臨床問題
-
「迷わせる選択肢」
が多数出題されていました。
「どこが問われるのか」を知ることが最大の対策です
この度、共通問題、総合問題の全問再現をまとめた資料を作成しました。
今後受験する人に役立てればと作成していますので興味がある方はnoteの【2025年度】診療看護師認定試験問題完全再現をぜひチェックしてみてください。


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