はじめに
前回は、午前共通問題の問6〜10を取り上げ、予防医療や生活習慣病、医療倫理、小児医療といった領域を中心に解説しました。いずれの問題も、「何が正しいか」だけでなく、「臨床でどう関わるか」という視点が強く求められていたのが印象的でした。
今回の問11〜15では、守秘義務や医療安全、免疫といった基礎的な内容に加え、介護保険制度など、より“医療を社会の中でどう機能させるか”に焦点が当てられています。一見すると知識問題のように見えますが、その背景には、情報の扱い方やチーム医療、制度理解といった、診療看護師としての実践力が問われていると感じました。
本記事では、これらの問題を1つずつ丁寧に整理しながら、出題の意図と臨床での思考のつながりを解説していきます。
問題11:医療倫理と法(守秘義務の例外と限界)
医療における守秘義務について正しいものはどれか。
- 患者の同意があれば個人情報を第三者に提供できる場合がある
- 守秘義務は医師のみに課される
- 患者死亡後は守秘義務は消失する
- 家族からの問い合わせには常に情報提供してよい
- 公衆衛生上の理由であっても情報提供は一切認められない
解説
守秘義務は医療の根幹ですが、
「絶対ではない」
という点が極めて重要です。
まず基本として
- 医療者には守秘義務がある(刑法・医療倫理)
- 患者の信頼の前提となる
しかし例外として、
患者の同意があれば情報提供可能
これがaの根拠です。
他の選択肢の誤りは本質的です:
- b:医師のみ → ✕(看護師・薬剤師など全職種)
- c:死亡後消失 → ✕(死後も継続)
- d: ✕(本人同意が原則)
- e:公衆衛生でも不可 → ✕(感染症法などで例外あり)
診療看護師に求められる視点
守るだけでなく「適切に開示する」判断力
現場では、
- 家族からの問い合わせ
- 多職種連携
- 地域連携
など、情報共有が必要な場面が頻発します。
そのときに重要なのは、「これは共有してよい情報か?」を判断できるか
守秘義務とは、“情報を隠す義務”ではなく“適切に扱う責任” です。
問題12:医療安全(インシデントと説明責任)
胃癌の手術中に,血液型B型の患者に誤ってO型赤血球製剤が投与された。麻酔科医と看護師が投与開始直後に気付き,投与量はごく少量であった。現時点で溶血反応などの有害事象は認めていない。
このときの対応として適切なのはどれか。
a.インシデントレポートを提出する
b.患者には説明しない
c.医療事故調査制度に基づき医療事故調査・支援センターへ報告する
d.診療録への記載は不要である
e.直ちに警察へ通報する
解説
この問題は非常に実践的です。
状況整理をすると
- 異なる血液型輸血(本来は重大インシデント)
- しかし少量・無症状
ここで重要なのは、「結果」ではなく「プロセス」
つまり、起きた事実そのものが問題です。
したがって、
- a:インシデントレポート → 必須(〇)
他はすべて誤り:
- b:説明しない → ✕(説明責任あり)
- c:医療事故調査制度 → ✕(死亡など重大事例対象)
- d:記録不要 → ✕(必須)
- e:警察 → ✕(刑事事件ではない)
診療看護師に求められる視点
「隠さない医療」🟰 信頼獲得 を実践できるか
医療安全の本質は、エラーをゼロにすることではなくエラーを可視化し、再発を防ぐことです。
そのために必要なのは、心理的安全性+報告文化
診療看護師は、チームの中核として「報告しやすい空気」を作る役割も担います。
問題13:免疫学の基礎(自然免疫と獲得免疫の役割分担)
免疫系の働きで正しいのはどれか
a. NK細胞 — 腫瘍細胞へ攻撃
b. T細胞 — 貪食能
c. B細胞 — 補体活性化
d. 樹状細胞 — 抗体産生
e. 好中球 — 抗原提示
解説
この問題は単なる暗記ではなく、免疫の“役割分担”を理解しているかが問われています。
正しい組み合わせ:
- NK細胞 → 腫瘍・ウイルス感染細胞を攻撃(自然免疫)
- B細胞 → 抗体産生 → 補体活性化(獲得免疫)
誤りの本質:
- T細胞=貪食 → ✕(マクロファージ・好中球)
- 樹状細胞=抗体産生 → ✕(抗原提示)
- 好中球=抗原提示 → ✕(主に貪食)
診療看護師に求められる視点
“つながり”で理解する力
免疫は正直イメージしづらく自分も苦手で丸暗記すると崩れます。
はたらく細胞見といてよかったと思った問題ですが
例えば、
- 樹状細胞 → 抗原提示
- T細胞 → 活性化
- B細胞 → 抗体産生
といった 一連の流れとして理解するとわかりやすいかもしれません。
診療看護師は、
- 感染症
- がん
- 免疫治療
に関わるため、“臨床で使える免疫理解”が必須です。
問題14:介護保険と医療連携(主治医意見書の本質)
要介護認定における主治医意見書に記載すべき内容として適切なのはどれか。
a.疾病の安定性および今後の見通し
b.患者の以前の職業歴
c.患者の性格傾向
d.家族歴
e.居住環境の詳細
解説
主治医意見書の役割は、「この人にどれくらい介護が必要か」を医学的に評価することです。
そのために必要なのは、
将来予測
つまり、
- 病状は安定しているか
- 悪化する可能性はあるか
→ aが正解
他の選択肢:
- b. 職業歴 → 参考程度
- c. 性格 → 不要
- d. 家族歴 → 不要
- e. 居住環境 → 別評価
診療看護師に求められる視点
「生活を見据えた医療」
主治医意見書は、
“治療のための情報”ではなく“生活のための情報”です。
診療看護師は、
- 医療モデル
- 生活モデル
の両方を理解し、「この人はどのくらい支援が必要か」を判断できる必要があります。
問題15:社会保障制度(介護保険の正しい理解)
介護保険制度について正しいものはどれか。
a.介護保険料は全国一律である
b.被保険者は60歳以上の者である
c.住宅改修費は給付対象に含まれない
d.利用者負担は一律1割である
e.要支援者は介護予防サービスの対象である
解説
介護保険の基本:
- 65歳以上(第1号)
- 40〜64歳(第2号:特定疾病)
選択肢を整理:
- a:保険料一律 → ✕(市町村ごと)
- b:60歳以上 → ✕(65歳以上)
- c:住宅改修なし → ✕(対象)
- d:1割固定 → ✕(1〜3割)
- e:要支援→予防サービス → 〇
診療看護師に求められる視点
「制度を知らない=医療が途切れる」
例えば、
- 要支援 → 介護ではなく予防
- サービス内容が変わる
これを理解していないと、適切な支援につなげられません。
診療看護師は、“制度を使いこなす医療者”である必要があります。
まとめ
今回の問題は、
「医療を安全に、倫理的に、社会とつなげる力」を問っています。
- 守秘義務(信頼)
- 医療安全(透明性)
- 免疫(基礎理解)
- 介護(生活支援)
このブロックの本質は、
「正しい医療」ではなく「社会に通用する医療」でした。
どれだけ正しい診断・治療ができても、
- 情報管理を誤れば信頼を失う
- エラーを隠せば事故になる
- 制度を知らなければ最善の医療が途切れる
つまり、診療看護師は“医療の質”だけでなく“医療の成立”を担う存在です。
過去問について
今回紹介したのは共通問題から5問を抜粋したものです。
試験では、
-
より実践的な臨床問題
-
「迷わせる選択肢」
が多数出題されていました。
「どこが問われるのか」を知ることが最大の対策です
この度、共通問題、総合問題の全問再現をまとめた資料を作成しました。
今後受験する人に役立てればと作成していますので興味がある方はnoteの【2025年度】診療看護師認定試験問題完全再現をぜひチェックしてみてください。


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